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2015年12月16日 21時42分

精算課税は片道切符 その2

カテゴリー:税務・会計

前回の続きで、相続時精算課税の注意点から。

①相続時の税金に注意
文字通り「相続時」に税金を「精算」する制度です。
すなわち、贈与者である両親や祖父母が亡くなった時の相続税を計算する際に、精算課税での贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算することになります。
2,500万円までの財産贈与については、税金の支払いを相続税の納期限まで猶予してくれる、と考えてもよいでしょう。
相続税を計算する際、3,000万円プラスαの基礎控除額がありますので、精算課税を使って贈与した財産と相続財産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、相続税も発生しません。

ちなみに、相続財産に加算する贈与財産の価額ですが、相続時精算課税の適用を受けた時(贈与時)の価額を用います。
なので将来値上がりしそうな財産は早めに(評価額の低いうちに)贈与し、逆に値下がりのリスクがあるものは(生前贈与せずに)相続財産として取得した方が良いことになります。

②適用される税率に注意
相続時精算課税を選択した場合に財産価額から控除できる2,500万円は、累計の金額です(年間ではありません)。
累計の贈与財産価額が2,500万円を超えた場合には、超えた部分につき一律20%の贈与税がかかります。
暦年贈与ならば、財産価額によっては10~15%の税率で済むものもありますから精算課税を選択したがためにより高い税率の対象になることもありえます。

③暦年贈与には戻れないことに注意
おそらくこれが一番大きい影響だと思います。
同一の贈与者から同一の受贈者への贈与について、一回相続時精算課税を選択してしまうと、それ以降の贈与についても必ず精算課税の対象となります。
もう二度と暦年贈与での税額計算はできません(まさにワンウェイチケット)。

例えば、平成27年中に父親が長男に2,500万円の土地を贈与し、相続時精算課税の適用を受けました。
計算式に当てはめると贈与税はゼロです。
翌28年に同じく父親が長男に100万円の現金を贈与しました。
このとき、暦年贈与だったなら贈与税の基礎控除額110万円以下なので、贈与税の申告納付の義務はなかったのに、27年に精算課税を選択してしまっているため100万円×20%=20万円の贈与税がかかることになるわけです。

なお「同一の贈与者」から「同一の受贈者」への贈与がこの縛りを受けるので、贈与者又は受贈者のどちらか一方でも異なれば暦年贈与のままでOKです。
上記の例ですと平成28年の贈与が「母親が長男に贈与する場合」や「父親が次男に贈与する場合」などは精算課税の対象ではないということになります。

④孫への贈与は後々の税金2割増しに注意
これは贈与者が亡くなった時に相続税が発生する場合限定です。
相続税の納税義務者に亡くなった方の孫がいる場合、このお孫さんが負担する相続税が2割増しになること※があります。
一般に財産の移転は「親⇒子⇒孫」と代々承継されていくものですが、孫に財産を渡すということは一世代飛び越えての移転となってしまい、課税の機会が一回少なくなるため、その分の税金として2割余計に取られてしまうのです。

※子が既に亡くなっている場合は2割増しの対象から外れます(この場合の孫を「代襲相続人」と称しますが、専門的な話になるのでこのへんはフワッとさせておきます)。

すみません、思っていたより長くなったのでさらに次回へ。

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