2016年1月11日 20時43分
年末調整について ~そもそもの話~
カテゴリー:税務・会計
時節柄、年末調整についていくつかご質問を受けました。
どうも年末調整の仕組みについて誤解されているケースがあるので、些末な論点についてはすっ飛ばし、根本的な部分をお伝えしたいと思います。
まず、年末調整は事業者の義務です。
そして事業者が年末調整を行わなければならない人(対象者)は、以下の3つの要件をすべて満たす人、と考えておけばOKです。
※日雇労働者、海外勤務者など特殊なケースは割愛
①その勤務先に扶養控除等申告書を提出している
②給与支給額が年間で2,000万円以下である
③年末時点でその勤務先に勤務している
で、ちょっと困るのが「自分で申告するんで年末調整しなくていいッス」などと宣う従業員さん。
確かに医療費控除を受ける場合などは、後日自分で確定申告する必要がありますから「どうせ後で確定申告するし…」という気持ちも分かりますが、年末調整は(少なくとも法律上は)事業者の義務としてやらなければならないので、従業員さんの意思で「やる、やらない」を決めるものではありません。
ただ実務上は、従業員さんの意向に沿って年末調整を行わないまま源泉徴収票を発行することもままあります。
というのも、毎月の給料から天引きされる源泉所得税は、給与支給額と扶養親族の数のみを基準として大まかに算定されており(源泉徴収税額表のことです)、生命保険料控除や住宅ローン控除などは全く考慮していないため、扶養親族の数が正しければ通常は多めに税金を徴収していることになっています。
なので、年末調整を正しく行った場合は還付になるケースがほとんど、逆に年末調整を行わない場合には還付を受けるチャンスをわざわざ棒に振っているということになります。
国からすれば、税金を余分に払ってもらっている以上、文句を言う道理もない、ということでこんな処理がまかり通っています(これは個人的な見解ですが)。
もちろん毎月の源泉所得税が正しく徴収されているのが前提となります。
話のついでですが、年末調整について思うのは(前も書いたかもしれませんが)なぜ個人の税額確定手続を、事業者の義務として課せられるのか、ということ。
事業者の利益獲得活動とは無関係の話ですからね。
海外に目を向けると年末調整という制度自体無い国も多いので、今後はそういう方向も検討の価値はありだと思います。