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2016年2月28日 21時13分

「NISAがいいさ」と言えないさ

カテゴリー:税務・会計 , 話題

日銀のマイナス金利政策の決定から10日ほど経ち、県内の銀行でも金利の引下げが発表され、普通預金の金利が年0.02%から年0.001%へ。
同時に住宅ローンの金利も引下げられるため、悪いことばかりではないとは言え100万円を1年間預けて付く利息がわずか10円という「うまい棒」状態。
こうした状況もあり、証券投資への関心はさらに強まっていくと思われます。

で、平成26年からスタートしたNISAですが、例のCMでは「非課税」という部分だけが強調され、デメリットと思われる部分には触れられていないようです。
まあ投資を促したいという思惑を持った人達が作ったCMなので、わざわざ敬遠されるようなことをアピールはしないでしょうが…。

ということで今回は通常の株式投資との比較を中心として、NISAが不利になるケースについてお伝えしたいと思います。

①譲渡損の損益通算が不可
通常の上場株式の譲渡損益は、同一の特定口座内であれば口座開設した証券会社で売却益と売却損を内部通算(相殺)し、損益を計算してくれます(さらに源泉徴収ありを選択していれば申告も不要)。
複数の特定口座を持つ場合でも、確定申告することで同様に損益を通算することが出来ます。

これに対して、NISA口座内で保有する株式を売却して譲渡損が発生しても、NISA口座以外の特定口座で生じた譲渡益との損益通算はできません。
儲けに課税しない代わりに損失についても「シラネーヨ」ということです。
このようなケースではNISA口座を利用したことで、かえって税負担が重くなるという理不尽な結果になります。

②譲渡損失の繰越控除が不可
通常の上場株式の場合、①で内部通算した後に残った譲渡損失は、確定申告することでその後3年間繰越しすることが出来ます。
ですので1年目に生じた損失を、2~4年目に生じた譲渡益等とこれまた相殺することが出来ます。

これに対して、NISA口座内で保有する株式を譲渡した時の譲渡損は、繰越控除が認められないため、損失は損失として処理して終了です。
そして翌年以降に特定口座で発生した譲渡益についても、前年の損失と相殺されることなくそのまま課税されるため、やはり①と同様税負担が大きくなります。

③非課税枠の再利用が不可
これは通常の株式売買との比較ではありませんが、NISAの非課税は年間100万円(平成28年から120万円、ジュニアNISAが80万円)までの投資が対象です。
この非課税枠は途中で株式を売却した場合でも復活しませんので、頻繁に株式の売り買いをすれば、あっという間に限度額一杯になってしまいます。
投資に慣れていて短期的に利益を出したい方には向かない制度と言えます。
ただこの点は、長期投資を促すという目的なので仕方ないのかもしれません。

NISA口座の稼働率は50%を超える程度ということで、ただ口座を作っただけで放置している方が相当割合いるようです(私もそのうちの1人です)。
今後の改正に期待、でしょうか。

 

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